洪水の前に
Lucy

終わりの前には
阿鼻叫喚があるのだろう
それには馴れていない
ので
終わりについて
思いを巡らすことができない
映像が映し出されても
目の当たりにした人の
インタビューが流れても
臨場感を感じられない

閉ざす
感覚を
認識を
塞ぐ

同情とか寄り添うとか
思いやるとか
その前に
明日は我が身に降りかかるに
違いないことだけは
頭で理解していて

身構える一瞬の猶予もなく
襲いかかる恐怖
それが憎しみや
怒りや
悲しみに変わる前に
断ち切られる
一粒一粒コツコツと
積み上げてきた
蟻一匹分の
わたし一人分の
今日までの意味




自由詩 洪水の前に Copyright Lucy 2019-11-04 12:51:28
notebook Home