無題
朧月夜

知り合いが増えれば増えるほどに、
切なさも増していく
そう教えてくれたのは、誰だったろう。
今はもう遠い場所にいるのだろうか。

ふり返れば、あなたの言葉だけを覚えている。
わたしはあなたの名前を知らない。
わたしはあなたの身体を知らない。
わたしはあなたのすべてを知らない。

何もわからないよ、何もわからないよ、
気が遠くなりそうなほどに。
何もわからないの、何もわからないの。
神は分かっているのだろうか。

あのレンガの向こう、コンクリートの向こう、
ポプラ並木の向こう、銀杏並木の向こうに、
あなたはいるのだろうか、
それともどこにもいないのだろうか。

あなたの吐き出したいくつかの思いは、
あなたが綴ったいくつかの言葉は、
今でもわたしの胸を締め付ける。
まるで、わたしを天国に引き留める呪縛のように。

「永遠の魂なんてないよ、
 魂のルフランなんてないよ。
 だって自我とは点ではないのだから。」
わたしの中にいるあなたは、あなたではない。

雨が、すべてを洗い流してしまったらしい。
また一からの、やり直し。
すべてをまた思い出していかなくてはいけない。
すべてをまた綴りなおしていかなくてはいけない。


自由詩 無題 Copyright 朧月夜 2019-11-01 14:05:24
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