女影
ひだかたけし
右足の親指が
反り返ったまま
さっきから奇妙な音
何処からともなく響いて来る
薄暗い部屋の白壁の隅が
僅かに滲み明るんで
柔らかく括れ揺れ動き、
懐かしい影
ひとつ、浮き上がる
[俺も交じっていいか?]
私がそう呟くと
途端にそれは消えてしまう
が、
暫くするとまた浮き上がり揺れ動く
反り返った親指の感覚、
既に麻痺して
奥まる意識を浮遊する遠い記憶の
その生々しい感触だけを、
瞼がほとんど開かなくなりかけ
冷却タオルに張り付いた両眼が、
カタカタカタカタ映写し続けている。
自由詩
女影
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ひだかたけし
2019-10-28 22:00:47
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