コードにつながった呪い
竜門勇気


匂いがするから
君が好きさ
メガネをかけてないときにも
不安定じゃないのは
君といるときだけ

窓辺に目を細めながら
置いたサボテンに
水をやってくれるかい
冗談のつもりで喋ったことを
吐き出して噛んでる

昨日買った服を
ナイロン袋から取り出して
そのまま羽織って出かける
花の名前のついた残像
部屋に残せる痕跡

吠える声
ドアの外で聞こえる
無気力さがそれに勝つ
なあ、出かけようよ
気に入らないなら
なあ、この部屋の何かをぶっ壊して
気でも紛らわせよ
僕も君もそれでハッピーだろ
片目を瞑って手にとった鍵を見つめてる
横顔を見てる
いつもそうするんだわかってる
でもまるで祈ってるみたいに見える

ちびたナイフを今日捨てた
間違ってることを探してるのに疲れたから
今この部屋にあったもの
壁に叩きつけられてどこか砕けてないものは
これぐらいしかなかった
かけがえがなかったり
代替品がなかったりするものはたくさんあった
これもそうだった
でも疲れを癒やすにはこうするしかなかった
これぐらいしか身軽になるためにできることがない

今日も君が何かをぶん投げるのを見てる
とんでもなくリラックスして見てる
派手な花瓶ほど床に散らばるときはつまらなく見える
今日も君が何かをぶん投げるのを見てる
とんでもなく優しい気持ちになれる

音を立てるから
君が好きさ
目をつぶってても
見えるのは君だけ

どんな夢を見てるときも
信じられないぐらい
でかい音で音楽を聞いてるときも
近く感じるのは君だけ

小石をひとつかみ
切り刻まれた思い出の出来損ないに重ねて
ああ、どんな夢を見てるときも
君を嫌いになった日しか思い出せない
音を立てるものが好きさ
匂いのするものが好きさ
僕とそれをつないで
動かない呪いが好きさ


自由詩 コードにつながった呪い Copyright 竜門勇気 2019-10-21 22:47:51
notebook Home 戻る