籠のなかの鳥
こたきひろし
あなたのもとに嫁いだ日に
鳥籠ひとつ持ってきました
ずっとずっと女になってからも
大切に飼っていた鳥だから
これまでに
一度だって逃げようなんてしたことなかったのに
あなたのもとに嫁いでほんのしばらくしたら
餌をあげている途中に
隙をみて逃げられてしまいました
空が美しく晴れ上がった秋の昼下がりに
何で何で何で
と悔やみましたが
雛の時から大切大切にしてあげたのにと
いっときうらみもしましたが
やはり解放されたかったんだろうと
ゆるしました
それは私が愛しい人の胸に飛び込んで
結婚というある種の籠のなかへ
自らのぞんで囚われた
この身への
裏返しかもしれませんでしたから