真似事――破れた包装紙
ただのみきや
家を出る秋の耳打ち襟を立て
空は澄み夢の骸か月白く
十姉妹通風孔を窺って
靴の紐ほどけて結ぶ霜の朝
人気ない路を横切る枯れ落葉
見上げても暮らしが地平を隠すだけ
楽しみは売り切れ憂鬱が残る
お互いの上澄みそっと啜る日々
秋風を通す間もなく寄り添って
どこからか並木の傍に韮の花
猫の足枯葉の音も吸い取って
散って往く似合う帽子もないままに
にわか雨子らの遊びは止みもせず
「晩鐘」の色味に似ても祈らずに
吸いさしも想いも風に転がった
夕間暮れ猫の背中に枯れ松葉
急かされて織った錦もすぐに褪せ
着込んでも埋まらぬ寒さ真中から
冷え切った心に燗酒注ごうか
鏡見て映る虚像を値踏みする
きみは胸に放たれたブラックバス
同じ風受けて別れる傘と帆と
茶碗割れ買った経緯思い出す
切れた緒を結ぶ想いと解く願い
《真似事――破れた包装紙:2019年10月19日》