悲愴(チャイコフスキー 交響曲第6番より)
日比津 開

誰が亡くなった?
悲愴の旋律が流れている
まさか、あの人がー
死を予感しながら
運命と戦ってきたのに
諦めの果てなのか?

あの人の足跡の中に
僕の人生はどのように
関わってきたのか?
かつて時間と空間を共にし
歩む時期があったのは
はっきりと覚え、忘れない

その後、離れても
次々と現れる強敵をなぎ倒し
凱旋将軍のような勇壮な姿を
つい先日まであの人は
見せていたのに
いまはその影もない

鬱々、綿々と消え入るばかり
大袈裟にも聞こえる音楽が
あの人の周囲からずっと
聞こえるようになっていた

それもいつのまにか
葬送の曲に代わっている
次はいつどこで悲愴を
聴くのだろう?
もしかしたら、またすぐ近くで?
いや、もう僕の中で
奏ではじめているのかも知れない




自由詩 悲愴(チャイコフスキー 交響曲第6番より) Copyright 日比津 開 2019-10-06 06:19:36
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