悲愴(チャイコフスキー 交響曲第6番より)
日比津 開
誰が亡くなった?
悲愴の旋律が流れている
まさか、あの人がー
死を予感しながら
運命と戦ってきたのに
諦めの果てなのか?
あの人の足跡の中に
僕の人生はどのように
関わってきたのか?
かつて時間と空間を共にし
歩む時期があったのは
はっきりと覚え、忘れない
その後、離れても
次々と現れる強敵をなぎ倒し
凱旋将軍のような勇壮な姿を
つい先日まであの人は
見せていたのに
いまはその影もない
鬱々、綿々と消え入るばかり
大袈裟にも聞こえる音楽が
あの人の周囲からずっと
聞こえるようになっていた
それもいつのまにか
葬送の曲に代わっている
次はいつどこで悲愴を
聴くのだろう?
もしかしたら、またすぐ近くで?
いや、もう僕の中で
奏ではじめているのかも知れない