顔(改訂)
ひだかたけし

灰色の街道沿いの
深く暗い井戸の底、
白く円かな女の顔が
微細に揺れ動きながら
切れ長の目を閉じ浮かんでいる

死んでしまった死んでしまった!
わたしは戦慄のうちそう悟り
隣で無表情に立っている、
愛娘の手を取り強く握る

[ママは死んでいるから
うちも一緒に焼いて下さい
納骨堂はもう買ってあるから]

久々に聴く娘の声、
この十月残暑の初夢の
どんよりした空気を切り裂き
きっぱりと訣別の意を響かせる

)灰色の街道沿いの古井戸は
)いつまでも女の顔を揺らし浮かべ
)飛び込む男を今か今かと待ち受けている

顔と顔の
終生続く隔たりを保ち
















自由詩 顔(改訂) Copyright ひだかたけし 2019-10-05 22:10:49
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