飛べぬもの 視るもの
木立 悟





車輪 歯ぎしり
笑い すぎる曇
橙色に触れる指
午後の星のはじまり


水の蜂 あがき
音の失いきらめき
泡の浪 痛み
報われない 複眼


夜に鳴る紙
さざめく鉱
ふところからこぼれ
光になる文字


水が水に落ちる音が
すべてすべて蝶になり
双つのものに交互に触れ
夜は見えるものとなる


どこまでも放逐され
けだものは押しやられる
毒の打ち寄せる水辺まで
楽団の墓のある中州まで


めまぐるしい夢
めまぐるしく消え
径なき径の浪の線
どこまでも無い音の群れ


何を待っているのか
何を待っているのか見えたなら
見えない午後の
見えない波間に触れては沈む
(見えないもの)(見えないもの)


数え切れない翼を生やし
飛ぶことのできない梟が
未だ来ない浪を視ている
未だ来ない終を視ている


















自由詩 飛べぬもの 視るもの Copyright 木立 悟 2019-09-28 19:15:22
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