ぶどうのつかいかた
la_feminite_nue(死に巫女)

やわらかな嘘につつまれていても、
ええ。きっと、それがいいと想う。
 
ひとふさのぶどうは湿り気をもって、
描かれることを待っているように。
 
ひとふさのぶどうはあたたかな冷たさで、
ええ。……いいえ。
 
彼女が口びるをすぼめてなにかを
ささやこうとしたときに、
 
ただ、その数秒のためらいのなかに、
すべてを見ていたの。
 
しっとりとして人らしくって、
ぶどうの実は、まあるい粒よ?
 
しっとりとして、葡萄らしくって。
彼女は、あたたかな冷たさで。
 
しろい指先。ふれて落ちる水滴。
そのために……光のなかに待っていて、
 
目を伏せることはなかった。
なにも迷いなく、迷って。いいえ?
 
彼女はきっとぶどうのつかいかたを知ってる。
──なぜって、……秋だし。


自由詩 ぶどうのつかいかた Copyright la_feminite_nue(死に巫女) 2019-09-24 10:34:07
notebook Home