雲をこえて
la_feminite_nue(死に巫女)
貴女のはげしい想いを、
わたしのなかにおとしてください。
わたしのなかできえていった、
なにものかがふたたび息吹をもつように。
貴女の大人らしく澄んだひとみから、
するどい顎のさきをつたって、
しなう枝が小鳥のはばたきとともに、
空をうつように、まっすぐに天へとむかって。
とおくの大海原では、死に絶えたにんぎょも、
心の池の中でなら、命をもつのでしょう?
ヒースのしげみ、剥き出しの小岩、
アベ・マリアをかなでる、教会とその鐘、
鈴を、ならしながらゆく馬車、
わだちを踏んで遊ぶこどもたち、
雪のふる夜には、雪にとざされる窓、
あかりの消された寝室には、……細く寝息をたてて。
気づかれぬままに、捨て去られるなら、
神よ、どうか、その応えをわたしに与えて。
舞台や劇場なんて、いらない、
しずかな繰り返しの日々のなかに、
貴女の想いのはげしさとともに、
わたしを縛る、いくばくかの鎖をもとめて、
おおきな声で、もしもさけぶことができるのなら、
そうしましょう、それがかなわないのなら、
銀杏の散りしく秋、躑躅たちが咲きほこる春、
ふと目にとまる心映えのなかに、
ちいさなささやきの歌を。
魂をしずめる、かすかな霊の靴音を。
はばたき、昇華する天使の羽根を。
貴女のながした、幾粒かの涙のような──
[ エミリー・ブロンテのイメージによせて。 ]