闇雲に
こたきひろし

煙草止められないかな

母ちゃんの吸っている煙草の煙が
俺の目を突き刺し
鼻から否応なしに入り込んでくるんだ

受動喫煙って言葉知らないの
直接吸わなくてもこんな風に一緒の車で吸われると
俺の体にも深刻な健康被害が及ぶんだぜ

下手したら
母ちゃんより先に俺の方が
あの世に旅立ってしまうんだ

とは言っても
十個下の母ちゃんが後から来るのは
順当だけどな

「何?あんたさっきからあたしの顔をチラチラ見て。アブナイから前を見ながら運転してよ。」

「いや別になんでもないよ」

「そんな事言って本当は言いたい事あるんでしょ」

「何もないって。母ちゃん相変わらず可愛いなって思ってさ」

「心にもないくせに、よく言うわね。本心は分かってるわよ。言いたい事は分かってるの」

「俺はお前の体が心配なんだよ。どうにかなっちゃうんじゃないかって?」

「どうにもならないわよ。大丈夫だから。でもこれ以上言われたら怒るわよ」

「わかった、わかった。もう言わないよ」

俺は煙草は吸った事ない。煙と灰がどうにも嫌いだから。なのに煙草吸う女と一緒になってしまった
巡りあって他人から男と女になった
性に飢えていたし、孤独だったから、相手が欲しかった

それは女も同じだったと思う

いつの間にか気づいたら夫婦になっていた
子供二人出来て
家族になった


ようするに運命共同体になった

煙草ひとつとっても


自由詩 闇雲に Copyright こたきひろし 2019-09-12 05:59:57
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