無言劇
由木名緒美

育まれた大地は哀しみに暮れ
あなたの幸せを乞う、と
腐敗した果実を土葬にいだく

還れない連鎖がある
祝し祝される転生の輪を閉じ
静かに響く余韻の産声を預ける

生き写しの影が光となる時
私は諦念の祈りを聴いた

真実は近過ぎるゆえに眼窩に宿り
声の主は居所を明かさない
切り裂かれた白布
その眩しさだけが手掛かりを灯し
導かれれる先に待つのは断崖の花

染まれば染まるほど
頬は橙に夜闇を孕み
昇れば昇るほど
空は地平へと墜落し
花弁は手の平をすり抜けて哀しげに微笑う

腐敗は破裂に期を熟す
何処に逃れようと
誰を逃そうと
幕は開かれていた
物語の帰結を黒子が叫ぶことを
何時悟るべきだったのだろう
死にゆく恋人達さえ袖に消えて

残るのは泣けない紙吹雪ばかり
残るのは溶けない解ばかり


自由詩 無言劇 Copyright 由木名緒美 2019-09-11 01:59:19
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