ヤンについてのエッセイ
虹村 凌

俺がアメリカの大学に入学する前に、語学学校で一年間遊んでいたのだが、
その頃の寮のルームメイトについて、お話をしようと思う。

その男は、ヤンと言う名の男だった。
身長は俺と同じくらいの23歳。徴兵経験済みの韓国人。
日本のアニメが好きな眼鏡野郎。
8月からいるらしく、やたら日本人と中が良い変な奴。
そもそも、韓国人とまったくつるまない。全くだ!

何だかんだで、部屋が移っても、結局は俺達ずっとルームメイトだった。
いい奴なんです。いい、奴なんです。
流石に、日曜の朝6時から、PCで戦争ゲーム初めて、
部屋中にマシンガンの音を響かせた時はキレそうになったけれどねぇ。

今、俺と同じ大学で彼の彼女も勉強している。
これが日本人。あんま可愛く無いんだけどね(笑
しかもすっげぇ天然系。意味がわからん。気の短い人は苛々するだろう。


留学したての頃の俺は、やたらとバッドワァドを使いたがる野郎だった。
そんな俺に彼は何時も、「Please be aducated person!」と言う。
つまり、もっと教養のある人になってね、と言う事。
その割りにはコイツは寝坊助で、俺が起こすと時計を見て、
「Oh!!SHIT!」と言う。俺に目覚めの挨拶もキスも無しに、だ!!
起きて第一声がこれなのだ。説得力無いって、こう言う事を言う。

大体、夜中の3時までPCいじってて、それで8時半に起きるのが無理だ。
いや出来る人間は出来るのだろうが、俺もヤンにも無理だ。
しかし彼は止めない。週末なんで朝までやってる。そして昼に寝る。
大体、毎晩、12時になると「辛ラーメン」と言う、
辛いだけのラーメン(乾麺)を喰うのだ。あんなのラーメンじゃねぇ!
と言ったら、「辛けりゃいいんだ」と言われた。
「これが無けりゃ死んでしまう。韓国人には必要なエキスだ。」と
力強く頷いて、一人で辛いだけのラーメンを喰っている。
俺も悔しいので、チキンラーメンを喰っていた。

彼らが乾麺を喰う時、最初から粉スープを入れてしまう。
普通は麺が煮えてからだと思うし、袋にも英語でそう書いてある。
なのに、彼らはスープと麺を同時に煮込む。風味飛ぶんじゃないか?
まぁ、いいや。俺が喰うんじゃないし…。

他の韓国人が喰う時は、大抵3人以上で喰うので、
デッカイ鍋でまとめて作る。
それを囲んですすっている様は、なかなか面白いモノがあるが、
外国人が見たら、狂気の宴だろう。
真っ赤な「何か」を笑いながら喰っている。しかもやっぱり辛い!
とか言いつつ、俺も散々喰った。でもラーメンはやっぱ日本だよ。

んでヤンは12時に飯を喰う。俺は1時に寝る。
彼はブラインドタッチが出来るので、電気の消えた真っ暗な部屋でPCを続ける。
そして時折、「うひゃひゃひゃ」と笑う。
…眼鏡にPC画面が写るし、部屋が暗いので、結構恐い瞬間でもある。

翌朝、俺は7時に起きる。(この頃まで、早起きは得意だった。
7時半に彼の目覚ましが鳴るが、止める気配は一切無い。
俺が止めて、声を掛ける。起きない☆
最近流行のスヌーズ機能がついていて、この行動を何回か繰り返すも起きず。
俺が学校の授業に8時半に出る。そして11時に戻ると、まだ寝てる。
「おい、起きろ」
がさごそ(時計を手に取る)
「OH!SHIT!」
俺は大爆笑。そんなんだったら、さっさと寝ればいいのに(笑

彼と飯を喰いに行った時、こんな事を言っていた。
「朝、太陽の光が差している中で眠るのは、幸せじゃないか?」
いや、そうだけどさぁ。学校行けよ、一応学生なんだし。
と言うと、「まぁな。しかし、健全なライフサイクルが欲しいなぁ」
そんなモンは自分で作るもんだろ、と言うと
「そうだね。でも無理だからいいや」と諦めが早い。

ちなみに、俺が日本に帰る時に、彼にプレゼントを買ってやった。
目覚まし時計だ。あの旧式のやたら五月蠅い目覚ましなので、起きるでしょう。


ヤンちゃんは自信満々だ。やたら自信満々だ。
自信満々に間違った道を教える。大抵違った道だ。
しかし、いつも憎めん奴だ。何ででしょ。
一度など、アニメを見ていたんだが、
「ひかる ってどんな意味だ?」と俺に聞く。
アニメの主人公なんだが、俺が「Flash」だと言うと
「あぁ、freshね」と言う。違うflashだ。
「だから、freashね」馬鹿、違うよ、あのライトのflash だよ。
「おう、だからfreashなんだろ?」オマエ人の話聞いてるのか?Queenのflashだよ。
「いいって、わかったよ。」本当か?
「あぁ、freashってね。」コラアアアアアアアアア!

ふざけてるんだが、何とも言えん。いや俺もつい笑ってしまう。



そうそう、この前、その彼女から面白い話を聞いた。
最近、彼は熊田曜子が好きらしい。かっかっか☆
ネット上をフラフラしていたら、可愛い女の子を見つけた。
どうやら日本の雑誌らしい。一目惚れだそうだ。
それから彼女の画像を探して探して、DLしまくったそうだ。
彼曰く、「こんな事は初めてだ」そうだ。
…遅いって、ヤンちゃん(笑

やっと性年になったのだね。青年だった君が、性年になったのだね!
オジサン嬉しいYO!やっとヤンちゃんが女の子に興味持ってくれて、
オジサン嬉しくて涙出ちゃうYO!

しかし、何でオマエの彼女は、熊田曜子とは似ても似付かんのだ。

そう言えば、コイツはDrペッパーが嫌いだった。
しかし俺は一時期ハマりにハマって、スーパーで2Lボトルが
1本50セントで売ってたのでまとめ買いしたところ
「この宇宙人が!」と言われた。こんなに美味しいのになぁ。


ヤンよ。永遠に。オマエが部屋でしようとした事は忘れない。
だって今から書いちゃうから☆

ボストンに留学していた韓国人で、
クリスマスに友達の遺体を運んでいた、
日本人の可愛くない彼女がいる、
最近は熊田曜子が好きな、
ややマニアックな男、ヤンの関係者がここにいない事を祈る。
いたら言ってくれ。消すから。


ある日、俺達は別の部屋で大きなパーティーがあったので行ったのだ。
しばらく飯喰ったり喋ったりして、時間を過ごした。
気付くと、ヤンちゃんが居ない。あれ?その彼女もいない。
おかしいなか。部屋か?と思う。部屋のリビングのドアが閉まっている。
何時もは開いているのに…あ、さては映画見てるな?
いつもこうやって映画見てるのだ。部屋を真っ暗にして。
肩に手なんかグっと回しちゃって、やらしぃんだからさぁ♪
と思ってドアを開けてもない。あり?何でだ?

さては部屋か。俺等の部屋の中か!電気付いてるって事はいるのか?

俺がドアノブに手を掛ける。鍵はかかっていなかった。
ドアは抵抗無く開いたのだ。

カチャ…


押し開けたドアから、先ず俺のベッドが見える。
ヤンちゃんのベッドは反対側にある。
俺はゆっくりと顔を出しながらのぞいた。

…こっちを見る4つの目玉。
むき出しの下半身。

・・・・・・・・・・・・・・( ´・ω・)?
・・・・・・・・・Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)えぇっ?!
そういう事かァァァァァ━━━━(・∀・ )━━━━!!!!

あわてて布団で隠す二人。
ゆっくりとドアを閉める俺。

_| ̄|○鍵くらいかけろよ…

煙草を吸いに外に出た。
あわててヤンちゃんがやってきた。
「ぜっ、ぜぜぜぜ絶対に言うなよ!!」
「わかったって。言わないよ。」
「ほほほほほ本当だな?!」
「ったりめぇだろ兄弟」
「やや約束だだだだぞ!」
「おう。まぁ落ち着けよ。」
「はぁはぁはぁはぁ(;´Д`)…ハァハァ」
「何で部屋に鍵かけんかったの?」
「だってどうせオマエ鍵持ってるし…」
「にしたって多少は時間稼げるだろ!」
「あっ・・・・そっか…」

(。-`ω´-) ヤる事で頭が一杯だったのね☆




もうひとつ、面白い話がある。(おい


それ以降、彼らは同じベッドで寝ている事がある。
俺も同じ部屋にいるので、流石に行為に及ぶ事は無いのだが。
ある休日の朝、俺がベッドで微睡んで、さぁ起きようか!
トイレに行きたいぞー!と思っていた時の事である。
隣で会話が聞こえた。
男「ねぇ…起きてる?」
女「うん」
男「そっか…ねぇ好きだよ」
女「うん。」
男「俺の事、好き?」
女「うん。」
男「好きって言って」
女「好きだよ(はぁと」
男「うふふふふふ」
女「そろそろ起きる?」
男「もう少しこのまま…」
女「でもトイレ行きたいなぁ」
男「じゃあキスしてから…」

ちゅううううううううううううううううううう

…起きるに起きられん状況になってしまった。
俺はこの後、15分ほどトイレを我慢し、起きたフリをした。



ヤン、愛すべき友よ。
俺がキレなかったのは、一重にオマエの雰囲気だ。
初めての彼女、出来てよかったね。
初めての彼女じゃなかったら、俺はキレてたよ。ねぇ?ヤンちゃん。











ヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
今も我が心に!


散文(批評随筆小説等) ヤンについてのエッセイ Copyright 虹村 凌 2005-04-03 18:04:13
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