錆行く声
ガト
高齢者の運転は危険だよって
母から車のキーを取り上げた
買い物に行けなくなっても
母は文句ひとつ言わない
ただ
バッテリーが弱るから
エンジンだけはかけてやってと
小さな声で頼まれた
なんて悲しいんだ
玄関のドアを開けながらそう思う
帰りがけにそっと母の車に乗ってみたら
とても懐かしい匂いがした
長い悲鳴を上げながらエンジンがかかり
私はまだ生きていますよ
元気ですよ
と言った
自由詩
錆行く声
Copyright
ガト
2019-09-04 00:13:35