僕が眠りについた後は
邦秋
椅子の上、ゆっくりと揺られて
止まらない時計の針を眺める
覚えているはずのない揺り籠の
寝心地を、なぜだろう思い出す
初めて綺麗な心を取り戻せたとき
記憶を旅するストーリーが目の前始まって
たった一粒の涙が全ての笑顔を濡らしていく
癒えたつもりで気にもしなかった
傷跡はまだ傷んでいる
そんな悔やむことばかりが映し出されていくのは
大事なものを傷つけないよう生きる術もわかっていたから
少しずつ心音が弱って
幕のように降りてくる瞼たち
窓から光が僕と椅子に射し込んで来て
体が少しずつ軽くなって浮かび始める
海の全てを巻き込んで寄せた波が返した後
砂浜に光る貝殻が静かに残されている
僕が眠りについた後も時計は止まらないから
明日からもここで生きるあなたは
せめて幸せなままでいてほしい