クランベリーの妖精
丘白月
窓ガラスに残る雨だれ
通り過ぎる車のライトが
ひとつひとつに色を付ける
桃の実のように淡く赤く
クランベリーのように
雨を吸ったすすきの穂
月にかざすと花が笑う
狐の嫁入りのように
きらきらと白い顔
頬紅はクランベリー
誰も摘んでくれない
酸っぱいクランベリー
秋の波がありとあらゆる
心の隙間へ季節の隙間に入り
もう捨ててしまいなさいと言う
種をポケットに入れ
庭に落としたのは智子
でももう誰もいない
妖精はクランベリーに
おでこをくっつけて
夏祭りの後のように
屋根に座ってじっと月を見てる