クランベリーの妖精
丘白月



窓ガラスに残る雨だれ
通り過ぎる車のライトが
ひとつひとつに色を付ける
桃の実のように淡く赤く
クランベリーのように

雨を吸ったすすきの穂
月にかざすと花が笑う
狐の嫁入りのように
きらきらと白い顔
頬紅はクランベリー

誰も摘んでくれない
酸っぱいクランベリー
秋の波がありとあらゆる
心の隙間へ季節の隙間に入り
もう捨ててしまいなさいと言う

種をポケットに入れ
庭に落としたのは智子
でももう誰もいない
妖精はクランベリーに
おでこをくっつけて
夏祭りの後のように
屋根に座ってじっと月を見てる



自由詩 クランベリーの妖精 Copyright 丘白月 2019-08-23 21:34:34
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