今日、仮退院の道すがら
ひだかたけし

今日、仮退院の道すがら
アスファルトでひっくり返り息絶え絶えの
蝉が次々と現れた

彼らはもう鳴くことはかなわず
ただ両脚を空にこすり合わせ
未だ熱を発散させながら
来るべき終わりを待っていた
過剰な熱の無様な発散、
彼らはそうして自らの姿形を失い
遠い虚空へと帰って行く
この世界へ確かな種を植え付けて

今日、仮退院の道すがら
アスファルトでひっくり返り息絶え絶えの蝉が次々と現れた
それは宇宙の虚無、創造的破壊への供物そのものだった











自由詩 今日、仮退院の道すがら Copyright ひだかたけし 2019-08-20 15:31:03
notebook Home