サイケディック・カー
ふじりゅう

凍りつく森林の葉先を
そおっとさわって
全身が固まる予感は
君の手を振る仕草 たった1秒半
ティッシュでくるんで
捨てる悲しいほど温かな絵日記の
初日の出のシミの熱が
そこらじゅうを襲う

ふたりの唇の温度は
電子レンジで熱したゆでたまご
ダイナミックな破裂音が
近所まで響く
だけど、前歯がコツンと接触した音色は
誰にも聞かれていないはず

頑張ってふわふわとたなびくシーツ
ガタガタ揺れる室外機から
複数の恋の残骸が少しずつ逃げていかないか
ずっと確かめている
改造したマフラーの雑音が定例挨拶
皆が取捨選択の末に
保持した性と捨てた恋はあまりに人間臭い
だけれどもこんなに命を捨てたくなるなら
折り鶴を広げなければならない

真っ赤な絨毯の上を前へ
どこへ向かっていくのか知らない
真っ青な頭皮から湧き出る手紙
何が書いてあるのか記憶にない
サイケディックな車で疾走す
僕に残された最後の手段だ
血糊で溶けかかった座席にしゃがみ
何かを壊したからこれは止まらないよ


自由詩 サイケディック・カー Copyright ふじりゅう 2019-08-09 03:53:20
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