鼠(ねずみ)
マサヒロK
あたりは静かになった
気をつけろ
まだ近くに
猫が潜んでいるかもしれない
誰もいないのを感じたら
その時はおずおずと背を伸ばし
あたりを見渡すがいい
湿った鼻をびくつかせ
そのまま
餌にありつくのだ
臆病なお前にも
時には
血のしたたる肉にありつけるチャンスが
あるかもしれない
だが期待はしないことだ
お前にもわかっているだろう
どの道
うまい話は
お前の物にはならないことは・・・
薄汚い体を縮め
終夜お前は壁の中
床の暗がりを這いまわる
わずかな物音にも驚き
餌のことなどそっちのけ
額にはうっすらと汗をかき
自分が何をしているのかも
わからない様子
―――気をつけろ!!
人間どもが入ってきたぞ!!
―――まあいい
恐怖心も
長く続くものではない
人心地ついたら
再び走り始めるのだ
逃げ回ってさえいれば
誰にも触れられることはない
誰にも姿を見られてはいけない
油断をするな!!
お前のその油断こそが
最も危険なことだ!!
物陰から顔を出してはいけない
そして
誰にも悟られることなく動き回ることが
完全に訓練され
習性となった時
その時こそ
ようやく餌にありつけるというものだ
やがて夜も白み始める頃
やっとお前はねぐらにつく
口には
カビの生えた穀物一つ
わずかばかりの安堵感に
お前は息をつく
やがて重い眠りが体を包み
お前は赤子のように眠り始める
やっと
長い一日が終わったのだ・・・
だがお前は気付いているのか?
お前の背中のすぐ後ろでは
壁一つ隔てて
熱い太陽が
お前のねぐらを
じりじりと暖めているのを・・・
誰も
強い日の光から
逃れることはできないのだ・・・
ピンク・フロイドのアルバム「アニマルズ」に捧ぐ
20代作成