あの世図書館
イオン

「もう、なんでだろう
 歴史は繰り返すって言うけど
 生きているのが嫌になりますよね
 死にたいくらいです」
「そんなこと言わないでください
 その、歴史が繰り返すとい理由を
 知りたいとは思わないですか?」

「それは知りたいですけど
 そんなの神のみぞ知ることじゃないですか」
「死んだら解るらしいんです
 あの世にはすごい図書館があるって聞きました」

「まぁ、あの、そうなんですね」
「信じるかどうかは別ですよ
 人は死ぬと、その図書館で
 すべての歴史、そしてその真実を
 あの世で調べることができるらしいんです」
「すべてってどの範囲ですか?」
「どうも、全人類の記憶がライブラリーになっているそうです
 例えば”JFケネディを殺したのは私です”で検索すると
 殺した本人の記憶から検索結果が出て
 真犯人とその理由も解るらしいです」
「えっ、でもそれは死んだ人の記憶ですよね?」
「いや、生きている人の記憶も寝ている間に
 収納されているらしいです」

「そうなんですか、記憶ねぇ
 それじゃ、私の秘密も?」
「そうらしいですが
 何を知りたいかというのは
 生きているうちに持つことなるので
 あなたの行動に疑問を持った人で
 その事実を知りたい人だけが
 検索するだけなので
 さらし者になる訳でないみたいです」
「そうですか、良かった
 いや、良くない、知られてはまずいことが
 いずれ、ばれてしまうということですよね?」
「隠し事がある事を知られなければいいのです」

「それじゃ、早く死ねば
 早く真実を知ることができますね
 もう生きていても楽しくないから
 自殺して早く図書館に行きたい気分です」
「あぁ、自殺した人は図書館に入れないそうです
 死後の世界はテレビもないですから
 その図書館は死後の楽しみらしいのですが
 自殺すると入れなくて、生まれ変わるまで
 暇をつぶすのが大変らしいのです
 何も考えずに生きて、疑問を持たない人も
 暇をつぶすのが大変らしいです」

「そうですか
 長く生きて疑問の数を増やしたほうが
 死んだ後に楽しめるってことですか」
「そうですね
 そこでね、答えの出ていない
 疑問をたくさん集めた本があるんです
 一冊いかがですか?」


自由詩 あの世図書館 Copyright イオン 2019-07-28 13:26:46
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