猫と財布 6話「最終回」
丘白月


飼い主だった智子が
湖面をすべるように現れ
ミントを抱き上げる

懐かしいぬくもり・・・
やっぱり
おねえちゃんだ

ありがとうミント
よくここまで

これで・・・私
ほんとうに天国へ行ける

四十九日めの満月の夜

これでもう本当に会えなくなる
でも明日からはミントの
この小さな胸の中だけで
いつでも会える

智子はミントを下ろした
そしてトワに言った
お願いしますと

風が一瞬強く吹いた

黄金の空気を森からはらった

ぜんぶ・・・
おねえちゃんも消えてしまった

泣いてるミントの足元に
クロウエアが咲いていた

クロウエアの妖精がミントの涙をふく

妖精になったの?
おねえちゃん?


まさか
ここか・・・
トワは思い出していた
ひと月ほど前に
池で亡くなった子がいた事を

ミントの財布を拾うと
中は空っぽだった

そっかこれで天国を買えたんだ
買ったのはミント?
それともあの子?
どっちでもいいか

ミント帰ろう
明日おねえちゃんの
お墓参りに行こう
この財布を届けてこよう

うん!

ねえまたお金貯めて
ここに来ようよ

そうだな
でも
もうお金はいらないよ

ミントの頭に妖精が一人
嬉しそうな笑顔で立っていた


*****
終わり


自由詩 猫と財布 6話「最終回」 Copyright 丘白月 2019-07-27 21:26:56
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