猫と財布 4話
丘白月


天国を目指して歩くふたり

今夜は満月だな
森全体が巨大な影絵だよ
ほら見てごらん
ミントの影だって
虎のようじゃないか

そう言って
小さなミントをからかった

ねえお兄ちゃんの名前はなんていうの?

名前なんてすっかり忘れてしまったよ
俺を呼ぶ声なんてもうずいぶんと・・・
でもまあミントには教えておくよ
トワって言うんだよ

トワ・・・・
なんだか天国みたいな名前だね

ふっ・・・さすがミントだ・・・

ねえトワの影はどこ?
僕が虎なら・・・

トワは自分の影が
薄く消えてしまいそうで
怖くなった

俺には影さえ寄り添ってくれないんだよ


もう寝ようか今日は
たくさん走って歩いて疲れたよ

あっ!!
ねえトワ!
あれ見て!
月が落ちてるよ!!

池が優しくゆるやかに輝き
ふたりの姿を眩しく灯し
森の隅々まで光が走っていく

綺麗だねトワ
おねえちゃんがいる天国も
きっとこれくらい・・・

トワはミントを抱いて
立ち尽くした
これが天国なのか?


ねえトワ財布のお金で足りるかな?


*****
つづく


自由詩 猫と財布 4話 Copyright 丘白月 2019-07-25 20:49:45
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