7月
渚鳥


断片を生む指先

砂にまみれた5本の煙突が現実をか細く揺れていた頃
塵が積もり溶けて排水口から青白い水となり……
朱色の錆も一緒に流れていた

自動車の代わりに風が滑走してく7月の朝に
テトラポットの裏に
ゆうべ脱走した太陽の脱け殻が落ちてる

(ねえ逃げてしまおうよ)

季節を吸った心臓が急速にどくどくと動き
逆流した夕焼けが男の肺を充血させる
煤けたフライパンの中で揺れてる未来
キッチンは輝かしい一人の王国の灯りだ
優しい音を立てて落ち葉が画面の中に積もるので
女の目の奥が燃える

5本の煙突たちは、次は虹になりたいと話してる

(水から上がらなくちゃ)
太陽は変わらず逃げ回っている
貴方の毒は私の血にさらりと溶けて
(ねえこれでいいんだろうか)
私の空の塵、塵、塵が、青く一瞬で燃え上がり

ママレードを煮ました
行き交う人達の上品
山々には星が流れたよ
貴方のくれた本にね
いろんな事が書いてあったから
少し勇気が出ました


自由詩 7月 Copyright 渚鳥 2019-07-19 23:34:30
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