シンビジウムの妖精
丘白月



ノックする音が聞こえた
私はゆっくりドアノブを回して押した

「こんにちは」
優しく懐かしい声

顔が見えないくらいの
たくさんのシンビジウムを抱えて
大好きな人が目の前にいる

「待たせたね」と言った
けれど時間は一瞬で戻った

遠く離れて私は思った
好きだったと

逢えなくなって思う
恋していると

毎晩思い出す
愛を約束したと

今は目の前に立っている
大きな鉢を玄関に置いて
そっと抱きしめてくれる
キスはシンビジウムの香りがした

鉢花から妖精がそっと顔をだす
二人をみて花に帰った
二度と離れない魔法はいらなかった



自由詩 シンビジウムの妖精 Copyright 丘白月 2019-07-17 21:03:09
notebook Home 戻る