シンビジウムの妖精
丘白月
ノックする音が聞こえた
私はゆっくりドアノブを回して押した
「こんにちは」
優しく懐かしい声
顔が見えないくらいの
たくさんのシンビジウムを抱えて
大好きな人が目の前にいる
「待たせたね」と言った
けれど時間は一瞬で戻った
遠く離れて私は思った
好きだったと
逢えなくなって思う
恋していると
毎晩思い出す
愛を約束したと
今は目の前に立っている
大きな鉢を玄関に置いて
そっと抱きしめてくれる
キスはシンビジウムの香りがした
鉢花から妖精がそっと顔をだす
二人をみて花に帰った
二度と離れない魔法はいらなかった