うだる様な暑さの昭和だった。
こたきひろし

八月。うだる様な暑さだった。
エアコンも扇風機もなかった家の中の暗闇で寝かされていた。
父親と母親の間に挟まれて川の字になって。
眠るまでは真ん中の一本線だった筈なのに何だか人間が絡み合う気配に目が覚めてしまった。
暗闇の中で俺はいつの間にか端になっていた。
父親と母親が汗まみれになっていた。二人共に真っ裸だった。二匹は雌雄の獣になっていた。
男女の激しい息づかい。肉体がぶつかり合う音。

貧乏を絵に描いた様な暮らしの中でも肉体の欲望は抑えられないのかよ。
昭和
昭和
昭和の時代だった。

貧乏を絵に描いた様な暮らしの中で五人も子供がいたら、遠慮してたら食い物にありつけなかった
俺は弟も妹もいらないよ。

なんて事考えられるわけないな。その時俺はまだ物心ついてなかったんだからよ。
アハハハハ
笑っちゃうよな。


自由詩 うだる様な暑さの昭和だった。 Copyright こたきひろし 2019-07-17 00:50:06
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