幻想の沼
丘白月


小径をぬけ
落ち葉を踏みしめてゆけば

森の奥にある古い沼
露草に囲まれた沼
百合が鏡のように覗く沼

私はひとりたずね
初めての景色を心に刻む

私のため息に誰かが応え
空へつづく天井が開放され
風が生まれた

柳が水面にふれ
五線譜が円を描いて
広がっていく

岸辺に立って目を閉じれば
心がアメンボウのように
歌いながら渡っていく

私の魂は遠い昔
ここで生まれたのかもしれない




自由詩 幻想の沼 Copyright 丘白月 2019-07-16 21:14:26
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