あの日、ボクは走っていた
坂本瞳子

燻んだ空が
呼びかけてくるようで
俯いたまま走り出した

このままどこへ行くんだろうか
自分に問いかけながら
スピードスケート選手のように
腕を左右に振りながら
走り続けていた

息が切れて苦しくなって
汗が流れ続けようとも
走って走って走り続けた

誰かにぶつかりそうになっても
否、実際にぶつかってしまったけれども
それでも走り続けた

躓きそうになりながらも
蹌踉めいてふらついて
崩折れそうになっても
もう止められない止まらない
といった体で走り続けた

向かい風に撃たれても
稲妻が煌きを放とうとも
水溜りや泥濘に阻まれようとも
走り続けるしかなかった

猫が後退していようとも
犬に吠えつかれても
烏が罵りを投げかけてこようとも
ただひたすらに走り続けた

それだけのことだ


自由詩 あの日、ボクは走っていた Copyright 坂本瞳子 2019-07-14 22:44:07
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