失業者になってしまった
こたきひろし

何ら事前の相談もなく、いきなり現れて解雇通知を渡された。
お前はもう要らないお払い箱だと言うわけだ。
定年延長も再雇用も
しないという訳だ。
年寄りに高い金払うなら、若い人材を安く使いたいと言うわけだろう。

いっぺんに世界は暗くなった
家のローン。病弱で働けない嫁さん。社会に適合
できない次女。
私は重い荷物を抱えていたのだ。
幸いに長女は非正規だったけれど働いていた。
しかし父親の抱えた重荷を負担させるにはいかなかった。
職場内の若い同僚たちは、表面上同情していたが内心は透けて見えていた。
他人は無関心で冷酷だからさ。
一家心中でもするんじゃないかと思っているに違いなかった。

二十年勤めた仕事を失って、私は無職になった。
僅かな退職金が振り込まれ、失業保険と合わせてしばらく食い繋いだ。

私はすっかり働く気力をなくしてしまった。
ハローワークには失業保険を受給の条件である求職の実績の為に月に何回かは足を運んだけれど、六十代の採用はほとんどなかった。

退職金は目減りしていき失業保険は期間は過ぎていくばかりだった。
焦りと不安に眠れない夜が続いてしまった。

ついにはハローワークへ毎日通い職探しをする自分がいた。

あれから四年。
私は生きている。

家も家族も失う事なく、その間に嘗めた辛酸を文字にはしないけれど。
できないけれど


自由詩 失業者になってしまった Copyright こたきひろし 2019-07-13 19:55:59
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