グラジオラスの妖精
丘白月



母の花鋏を持って庭に下りる
背の高いグラジオラスが
白い雲を背にして並び

赤い花が足元から空まで咲き
さあどうぞと言っている

一緒に埋めた球根が花になり
私の手を握ろうとする

母の面影が閉じた目蓋に
花の模様のように浮かぶ

夏の風が手紙を広げ
妖精が読んで聞かせる

深い花瓶に挿したなら
そこから生まれる言葉を
摘んでください
厚い愛情の言の葉を

熱い雫が花鋏に落ちて
ぱちんと音が響く




自由詩 グラジオラスの妖精 Copyright 丘白月 2019-07-09 21:58:54
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