台所
両性具有

夜中に喉が渇き
母屋の錠を外す
手探りで明かりを点け
台所の静けさに佇む

グラスの氷水を飲み干し
仮に
今が冬であると想像する
台所の静寂は冬の冷気と相まって極まり
僕の吐息は白い肌を晒す
あと数時間後にはこの台所に母が立ち
ストーブを点けて味噌汁の具を刻む
頼りない電球の煤けた明かりの下で
澱みない読経のように続く真冬の朝餉の支度が
聞こえてくるような気がした

灯りを消し
母屋の錠を掛けて
二階へ上がるとき
寝ている母の手でもさすろうかと思ったが
それは大げさで不吉な言霊のような気がして
その夜は
そのまま寝ることにした










自由詩 台所 Copyright 両性具有 2019-07-07 22:15:21
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