七夕の記憶
坂本瞳子

雨が嫌いなくせに
今日だけは雨が降る予感に
嫌悪感が伴わない

子供の頃から認識している
七夕には雨が降ると

いつもそうだった
織姫様と彦星様が年にたった一度
会える日だから
今日は晴れるといいですねと
口をそろえて皆が言うけれど
晴れた七夕なんて記憶になく
今宵も残念な七夕ですという
お決まりのフレーズがこの胸にも
刻まれている

どうせまた今日も雨が降る
二十歳ハタチも過ぎて
月が輝き銀河が煌めく夜空を夢にみたりはしない

きっとまた今宵も雨は降る
二人が再会したところで
いがみ合って罵り合って傷つけ合う
大河に分かたれたままでいた方が
よほど幸せな二人だから
雨が降り続けることがむしろ好ましい

まだ大人になりきれない私には
掻き消すことのできないコバルト


自由詩 七夕の記憶 Copyright 坂本瞳子 2019-07-07 19:22:00
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