妖精の庭
丘白月

毎晩僕は羽根を少しだけ広げて
階段を走って
踊り場の窓から飛び降りて
庭に並んだ蕾を踏んで
妖精たちに怒られて
月あかりの草むらで星を見て
猫の鳴き声が近づいても
僕は場所を渡さずに
ただ月の散歩に付き合って
星座を探して草を一枚咥えて

ああいったい誰が見ている
誰も知らない
妖精が見て笑っているだけ
朝を待つ蕾が庭で星の歌を聴く
僕の心はどんなに枯れていても
背中に広がるのは
美しく瑞々しい世界

羽根が僕の羽根が
半分閉じたままの羽根に
初めて逢う妖精が
手を当ててくれてる
祈るように僕のために

目を閉じて星を感じていた
妖精の歌が聞こえる
いったいどれくらいたったのだろう
花の香りで目が覚めた

あったと思っていた羽根は無く
でも空にいる感覚で
ありがとうと言葉が生まれた
朝露のような涙がひとつふたつ
花とわけあってみっつめを流す



自由詩 妖精の庭 Copyright 丘白月 2019-07-07 08:05:41
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