さよなら。あなたの細い右腕
かんな

ねえ、さよならをしよう
後ろ向きに流れるメロディ
誰かが世界のしあわせを歌うよ

アスファルトを強く蹴る
自分ってなにか
求めすぎて自販機で炭酸飲料のボタンを押す
すべてが泡となって足元を濡らす

コンビニで正解を買いすぎて
売り切れちまった煙草をふかす
海辺と書いてひとりぼっち
夜中の電話は誰も取らない

夜道のかげぼうしがついて来る
月が照らしだす間違いや後悔を
スケッチブックに書き殴る自分の残像
ねえ誰か聞いてくれよ

知ったかぶりの言葉たちを
かき集めるしか脳がない
くだらないから意味があるって
思いたくて明日が来る

待っていたって誰も来ない夕ぐれ
公園のベンチでひざを抱える
ひとりよがりでこどくなふり
泣いたふりして傘をわすれる

ねえ、さよならを言うよ
しあわせを歌う誰かのとなりの
言い訳がましい人間のふりした自分に
傘をさしだしたあなたの右腕が
細くて白くて泣いてしまったんだ


自由詩 さよなら。あなたの細い右腕 Copyright かんな 2019-07-06 21:30:52
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