パチンコとパチスロとヤスくんとぼく
末下りょう

パチプロを自認するヤスくんはこのごろずっとパチスロに文字通りハマってるという

ちゃぶ台をひっくり返して戻ってきたキラキラの振り出しでヤスくんは煙草をふかして貧乏揺すりして早速フリーズしてる

口八丁手八丁 打ち水あいさつ竹ぼうき 柏手パンパン拝んでさあさ振り出し踏み出し盤上よろめき廻すスロット影法師 へへ
生きるか死ぬか / ハムレットのルーレットは馬の耳に念仏か
チェリー/スイカ/幽霊/クリスマス ベル/張ったスペースでエースはペースを乱してる テヘ

ぼくは三下 赤提灯が灯るベンチで胡座きめこみ缶コーヒーをちびちび さらし晒したクイーンの谷間にはまる音符を眺めてる

パチンコのほうの病み闇のスペースをずりずり四つん這いになって子供が銀の玉をお手てで集めてる
それを若いお母さんに渡してる
回転率と回転数にハネ飛ばされそうなメロドラマ的小指の憐れ

たまさか暗がりで倒れだすドミノがキレイな景色をパタパタ露にする遊びに酔いしれる
小癪な手口は見て見ぬふりの戯れの薄ら笑いがゲームに深みを与えてる
町娘たちが蕎麦、いやソーダをすすってあら美味しい

パチンコの神の手で二転三転あら派手などんでん返しで裕福そうな老紳士が無表情で大当たり 隣の台の女の涙に漂う死

最後のサイコロを放つまで降りだす雨に振りだしで濡れて 踏み出せば晴れさと舞われやまわれヤスくんよ 懲りないぼくも憎めないヤスくんと昼間のパチンコ店で文字を打つ


自由詩 パチンコとパチスロとヤスくんとぼく Copyright 末下りょう 2019-07-06 15:48:16
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