馬鹿にしてた
DFW
草原で踊りもせずに、海岸で泳ぎもせずに読書に耽る人を馬鹿にしていた、そんな夏に
好きになった少年が
寂れた展望台で静かにひらいたタイトルをひそかに探して
わたしはあまり踊らなくなって、あまり泳がなくなった
夏休みに好きになった少年は春休みに好きな少女といなくなり
わたしには読むことが残された
やがて日々に追われはじめると、持ち歩きに困るものを避けて負担のない薄い本ばかりを選ぶようになり、軽い本しか信じなくなった
そうやっていつからか読み終えるためだけに読み始めるようになっていた
それでもまだ余分な重さを感じる鞄を肩にかけて、知らない感性や知性、物語を求めて、わけのわからないことを増やすことで成長していると仮定したりもして
だらしなく今日も、なにも知らないと知ることを信じて文字を追いかけている
電車の人混みのなかで追い、カフェの席で追い、狭いベッドのどこかで追いかけ疲れて眠り
寂れた展望台で静かにめくられたあの夏のページの匂いをさがしたりして
少年を連れさった少女のようにいまもなりたがっている