高架を走る電車の窓から沈む夕日を見つめていた
Lucy

わたしの前の席が空いたけど
今しも都市のかなたに沈もうとする大きな夕陽を
見続けていたかったので
座らなかった

燃え滾る線香花火の火球のような
太陽だった
それを反射して真紅に光る壁面が
ビルからビルへ移動するのを
見つめていた

紫のベールに包まれた街
光と影に彩られ
宇宙の只中で静まり返る
世界はこの一瞬に
生まれ変わろうとしているらしい

街が現に沈むまで
見届けたかった
この世にたった一度しかないこの光景を
吊革に掴まり目に焼き付けた

夕日が沈み切ったころ最寄り駅に着いた
燃え尽きたように夕焼けは薄く
いつもの変哲ない街並みが
しらじらとそこに広がっていた

つい数分前の激しい輝きを記憶しているのは
私だけだという気がした
少しお得感があった
緑の残像が目の前にいつまでも浮いていた 


自由詩 高架を走る電車の窓から沈む夕日を見つめていた Copyright Lucy 2019-07-03 21:14:08縦
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