君は蛍、夜を泳ぐ
中原 那由多

逢魔時に貨物列車がガタンゴトン
その向こう側
それはいつの日も
青い幻、淡い眼差し

生憎の、雨
4.7inchの水槽を
ただ、漠然と覗き込む

上へ、下へ、奥へ、奥へ

気づけば鱗が瞬いて
気付けば背びれが、尾ひれが生えて
扇形の排水溝から
海を目指して飛び出していく
それ故に、クラゲの産卵に見惚れては
瞼の裏側にいつも忘れ物をしている

君は蛍、夜を踊る


止まらない風
終わらない夜
不意打ちの

積乱雲が仁王立ち
睨みつけて
睨みつけて

稲妻を振り下ろせば
紫陽花が、にかりと笑う

君は蛍、夜に落ちる


落ちる
落ちる
血液の循環
命の実感
枕の裏側へ、その奥を目指して
どっ、どっ、どっ

蜻蛉の眼鏡であるかのように
虹色で
逆さまの
景色はそっと散らばった
六角形に散らばった




散らばった
青いシャーベットが歯に沁みたような
冷たい億劫を余所目に見ながら
ガラス玉を掻き集めた
月が落とした



の隙間を掻い潜る
淡い葛藤、ラムネ瓶
飛び跳ねた浪漫に心が踊れば

君は蛍、夜を泳ぐ


自由詩 君は蛍、夜を泳ぐ Copyright 中原 那由多 2019-07-02 21:40:19
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