終末のゆりちゃん
末下りょう
その肌は冷凍マンモスをみた夏に似てた
ちん毛のないぼくを終末のゆりちゃんが連れ去った夏に
氷みたいに眠るための巨大さがあった夏に
強化ガラスを隔ててぼくより未来に置かれてた剛毛
ぼくのつるつるの包茎をあざわらうような長い鼻と牙
地上に住み着く者を残してS字で未来に帰ったもの
電工掲示板に流れる半透明の考古学的プロパガンダ
今より先は存在しないって学校で習ったのに
青黒い体毛に大雪原の気配を纏ってずっと未来で眠ってた
冷蔵庫にマグネットで留めた絵葉書の マンモスのこめかみに描きたした槍
ぼくの勃起したちんちんみたいな槍
ヒト科はすべて認知症だ
氷みたいに眠る巨大さがやどる肌に触れる
終末のゆりちゃんとちん毛のないぼくをなつかしむみたいに