終末のゆりちゃん
末下りょう


その肌は冷凍マンモスをみた夏に似てた


ちん毛のないぼくを終末のゆりちゃんが連れ去った夏に


氷みたいに眠るための巨大さがあった夏に


強化ガラスを隔ててぼくより未来に置かれてた剛毛


ぼくのつるつるの包茎をあざわらうような長い鼻と牙


地上に住み着く者を残してS字で未来に帰ったもの


電工掲示板に流れる半透明の考古学的プロパガンダ


今より先は存在しないって学校で習ったのに


青黒い体毛に大雪原の気配を纏ってずっと未来で眠ってた


冷蔵庫にマグネットで留めた絵葉書の マンモスのこめかみに描きたした槍


ぼくの勃起したちんちんみたいな槍


ヒト科はすべて認知症だ


氷みたいに眠る巨大さがやどる肌に触れる


終末のゆりちゃんとちん毛のないぼくをなつかしむみたいに



自由詩 終末のゆりちゃん Copyright 末下りょう 2019-07-02 19:18:25
notebook Home