「雨の工場」
ベンジャミン

 
はるか空
最近は見上げることを
忘れていた気がする

それは足もとの水溜まりを
下を向いて避けながら歩く日が
続いているからだと思った

はるか空
そこには雨の工場があって
せっせと降らしている

世界から集めた
悲しいことたちなんかと
舞い上がった水蒸気で

こらえられなくなったら
そうして落ちてくる

だからって

今日は何となく悲しいなんて
それはきっと気のせい

そうやって降ってくる雨を
瞳に映して見上げたら
何だって悲しい

はるか空
雨の工場が今日も働いている

僕らが見上げることを
忘れないように

いつも晴ればかりじゃないことを
思い出させるように

はるか空で
 


自由詩 「雨の工場」 Copyright ベンジャミン 2019-07-02 01:31:06
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