羊水の湖
両性具有

羊水の香りがした
その香りに手をひかれて
たどり着いた湖畔の茂みで
ぼくは義足を脱ぎ捨てて
エラで息を吸い
体を翻し、錆びた銀の鱗に
月光を砕いて踊り飛び込んだ
死期の近い動物のように
ずっと眠りに浸っていた
君を蹂躙する自慰の間は
生きる喜びに満ちていた
射精後の空白に
夏の午後のきらめきが燃えて
破水した夜の闇が
君の女陰からこぼれ始めて
欲望の嵐がずっと吹き荒れた
羊水の水面に浮かんで
僕は君の肢体を
深い青の夜空に眺めている
君の胸のなかで
絶命する瞬間を夢見ている
命の抜け落ちた肉の器となった
僕の耳に君が泣きながら囁く
やさしい子守歌を聞いている
青く淡い
羊水の湖で










自由詩 羊水の湖 Copyright 両性具有 2019-06-26 21:02:18
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