唾液の海
両性具有

ぼくを作った人が
無造作に捨てたあまりの木材で
ぼくは箱舟を作った

唾液の雨が降るのを待った
やがて何もかもがその中に
砂糖のように溶けていくのを見た
ぼくは小鳥の巣から踊り転げ落ちて
箱舟をせっせと水面に浮かべた
逃げ出すことを決めた夜
体は操り糸がなくても動いた
君の乳房が月になっていた
傷痕に刷り込んだ砂が
甘い夢精を教えてくれたあとで
両指が11本になって
11本目の指から
絶えず精液が零れていた

夜空に手が届きそうなくらい
沖まで流れてきた
それから
僕は盗んだ服を脱いで
裸で唾液の海に飛び込んだ
飛沫が飛んで
箱舟も僕も溶けてしまって
そんなふうにして
僕は空っぽの眠りについた





自由詩 唾液の海 Copyright 両性具有 2019-06-23 23:44:26
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