モノローグ/断絶のために
ただのみきや

封筒を開くと雨が降っていた
ポプラを濡らし翻るみどりの雨
ふるえる雛鳥を包み込む手つき
そうして一気に命を絞り出す
言葉は自らを断つ

川沿いの公園
濡れるがまま置き去りにされて
終わらない便箋の上を歩く
虫眼鏡の中の蟻がわたし
雨粒ひとつに濡れそぼち
見つめる焦点に焼き尽くされる

空の高みから風鈴の音
わたしはわたしという違和と対峙する

――なにを見ているのか
ゆれる野の花
そよぐ木々の
光に穿たれのたうち回る影か
見えざる風の監督
見せる光の演出

――なにも
雀たちの目まぐるしい交尾
銀の小さな女神像のような水飲水栓
虹色の網膜をすべる世界
見たいと欲したもの
見たと信じるもの

つながるためではない
太陽は心臓
隠された青白い秒読み
針を盗まれた時計の顔であの溶け落ちた辺り
わたしとおぼしきなにかが
文字化して断絶




             《モノローグ/断絶のために:2019年6月23日》








自由詩 モノローグ/断絶のために Copyright ただのみきや 2019-06-23 13:54:14
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