いっそのこと
坂本瞳子

汗ばむ項には
触れてみたくなるから
見ないでおこう

汗のしずくが湧き出でる
美しい孤の形を描くそれは
決して滴らせることなく
雨のような粒を滑らせている

その一つ一つを
薬指の腹でつぶしてみたく
なりそうだから
手はポケットにしまっておこう

変な声が出そうだから
欠伸をして誤魔化そう

舌舐めずりしたい欲望を
抑えられそうにはないけれど
口笛を吹くように唇を尖らせて
息を吹き出して
それから強く息を吸って
頬をすぼめて
倒れてしまおう


自由詩 いっそのこと Copyright 坂本瞳子 2019-06-21 21:51:40
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