金縛り
こたきひろし

台風が上陸していた
一人住まいのアパートの部屋
ドアの外側に得体のしれない何者かが立っている
右手に凶器の斧を持っていた

ゴーゴーと激しい風が吹き荒れて
ザーザーと激しい雨が降り続いていた
最初はひっそりと息をひそめていて何も危害を加えてはこなかったが
その内に急に奇声をあげながら暴れだした
斧を勢いよくふってドアを壊し始めた

俺は部屋の中で布団を被っていたのに
その一部始終がまるで動画のように見えていた

このままだと殺される
一刻も早く起き出して部屋から逃げ出さないと
斧で脳天を割られてしまう

起き上がろう
逃げだそうとするのに
体がまったく反応しない
気持ちだけが必死になってた

ああ
これこそが
金縛りって
やつか





自由詩 金縛り Copyright こたきひろし 2019-06-13 04:59:43
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