だいたいそんなもの
帆場蔵人
そうして雲海は焼け落ちて
さよならすら許さない晴天
山を下ろう沢の流れに沿って
箱庭みたいな町に足を踏み入れて
あの角を曲がりこの角を曲がり
パン屋で焼きたてのフランスパンを
その先のコンビニで新聞とミルク
顔も知らない政治家の立看板のある
辻を右に曲がれば、海だ
年寄り犬は今日も欠伸みたいな
鳴き声でリードを握る人は
昨日と違う、気づいてる?
ほんの少しずつ傾いてゆく
何かが溢れ落ちてまた水平になる
あの海の水平線みたいに揺るぎない
日常なんてきっとないのだ
フランスパンと新聞とミルクを
抱えて通っていくこの日常も
焼け落ちた雲は波間にもみえない
さよならすら許さない晴天だ
なのに水平線が揺らぐほど
バターを買い忘れて後悔するのだ
そんなものだろう