列車模様(運命共同体)
あおいみつる

列車にゆられて行くひとびと
まるでアニマルのような
いや異星人のような人の群れ
横に座っているOLが居眠りを始めた
首をカックンカックと私の肩にもたれる
赤いヒールの女の白い足がのびる
喪服姿の老人たちが降車していく
突然少年が車掌をまねてアナウンスをする
JKが「やばいよ」「きもい」を連発する
スーツ姿のビジネスマンはスマホで新聞をチェック
ベビーカーの赤子はママに微笑み
ペットの子犬が神経質に吠えまくる
それを咎めるような視線が飛び交い車内は騒然とする
褐色な肌に白いTシャツのマッチョなダンナは
自慢気に太い腕をのぞかせる
吊り輪で懸垂を始める体育会系の男子
床にテントを張りカップヌードルをすする青年
車内はスマホ依存率93%
山ガールは完全装備で杖を小脇にかかえ
北欧風の金髪スレンダーガールは6各国語をあやつり
見上げれば誇大美容広告があちこちに貼ってあり
マスクの女の素顔は謎のまた謎でそれでいい
最近の童子はやたら大人しくて用心深い
スカートから白い足を広げるはしたない女と
それを見ないふりするオヤジと覗こうとするやつ
杖をつく老人に席を譲る礼儀を重んじる女性
ゾウやキリン、猿、鹿、カバ、イノシシ
火星人や金星人、土星人、海王人、
わけのわからない生物が列車に揺られてゆく
名も知らぬ何処の誰とも知れぬ人々と運命を共にして
この星の列車は今日も行く



自由詩 列車模様(運命共同体) Copyright あおいみつる 2019-05-29 18:37:02
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