不老と不死の薬草
こたきひろし

そのとき
私はゆうに百歳を越えていました
しかし
若い頃に思ってもいなかった長寿は
私に多くの不幸をもたらしました

私の周りは皆死んでしまい
私は見事に一人ぼっちになってしまいました
なのに私はいっこうに衰えずますます元気になっていくんです

これはおかしい異常です
年甲斐もなく全てが元気なのです
その元気さ加減は突然変異かもしれません

若い女性の一人や二人
メロメロにさせたとしても
まだ余裕なのです

これはおかしい
異常です

それで世間は
あらぬ疑いをかけてきました

私が不死と不死の薬草を栽培し
それを天日に干して乾かし
こまかくして
白湯で服用しているに違いないと

そんな根も葉もない噂を嗅ぎ付けて
多くの薬品会社が極秘に接触してきました

あらゆる手を使ってきました
お金に糸目はつけないので売って欲しいと攻め立てられました
中には美女を近づけて私の魂を奪おうとするやからもいました

なので私は結構な悪人になってしまいました
お金は騙しとる
美女は絡め取りました

なにぶん疲れを知らない老人なので
死ななければ
怖い存在は何もありませんから

たとえ不幸のどん底に落ちても
生き続けられるなら
いつかは這い上がれるでしょう

最高でーす
最高でーす
死ぬのは面倒臭いです

私より先に沢山の人が死んでしまいました





自由詩 不老と不死の薬草 Copyright こたきひろし 2019-05-25 06:33:45
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