背骨
ルラ

人を語るには 背骨が足らず
陽を仰ぐには 背は歪み
背中のまあるい 雑草猫も
綺麗な姿勢を しているのに

祖父と思しき 影を落としつ
奥より垂れる 奇妙な方角
暗澹たる 手相に敷かれた
業の泥濘を 歩いてきた

襤褸の長靴 光る観覧車
愚かな荷は もう棄て去り
代わりに燃える靴を 履く
さて遠く迄 行かねば為らない

深海の異国も 春の火山も
並べて踏破し 次ぐ魔境へと
丹田が調律す 脚力を以て
突っ切ろう 騏驥の如く

然うして 南極の燎原を
狂奔しつ 此の身を焼く
火中の眼に 細氷を見
墓標に 上等な氷塊を

背骨を欠く 流氷と成り
背骨を乞う 流氷と成り
背骨を求め 漂流しよう
背骨をくれ 千本くれと


自由詩 背骨 Copyright ルラ 2019-05-21 21:09:05
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