憂き目の空
橘 紫苑

傷つけない為の見え見えの嘘は

ナイフがじわりと刺さるように痛い

いっその事強く突き放してくれたなら

この胸をすぐに貫通して痛みは一瞬で過ぎる

金属片の錆が酷くこべりついて沁みる

喰い込んだ刃先が 眼前に起こる事象の

何もかもを偽りに見せる

痛みが耳元に囁く 「もっと苦しめ」

痛みが脅迫する「命絶てば楽になる」と

目には見えない傷を背負って

脅迫に耐え 疼く痛みに抗う

ただ目的もなく戦っている

おぼつかない表情で テレビをつけると

バラエティ番組のタレントが

自分を嘲笑っているような気がした


自由詩 憂き目の空 Copyright 橘 紫苑 2019-05-19 17:07:35
notebook Home 戻る